三年番茶の効用

店主のコラム

日本人は食事の後や、おやつを食べる時、ふっとくつろぐ時に飲む飲み物は大抵、お茶でした。今では食生活が洋風になり、パンにコーヒーや、パンにジュースが一般的になっていますが、年齢を経るに従い、お茶が常用品になってきます。

昭和50年に自然食品店を開業した当時、川崎の空はけむりで真っ黒、九州の水俣ではチッソという会社による水銀中毒と、日本は公害列島になっていました。高度成長の弊害があちこちに表れている時に、作家・有吉佐和子さんは“複合汚染”という本を出版しました。本の頭初に取り上げられた品物がお茶でした。

お茶の葉は新芽を除き、硬くて虫が食べない葉なのですが、お茶の木の回りには雑草がはびこります。この雑草を強い農薬で退治するのですが、お茶の木は根から散布された農薬を吸い上げると同時に、摘まれた葉には、残留農薬があり、製茶にするには、葉は洗わずに蒸して乾燥するだけなので、“お茶を淹れて飲むことは農薬を飲むのと同じだ”と大問題になりました。あれから、約50年たち、有吉さんの記憶はドンドン、遠ざかってしまいました。

三年番茶というのは、お茶の葉だけでなくお茶の枝も一緒に乾燥させて、3年間熟成させてから、ほうじたお茶です。この三年番茶は陽性に近い中庸で、効能としては「身体を穏やかに温める」作用があり、ほうじてあることでカフェインやタンニンが抑えられています。刺激が少なく、胃にも優しいのが特長です。特に最近はカフェインが自律神経の働きを高める、集中力を高めるということでコーヒーやエナジードリンク、緑茶、紅茶を飲んで眠気覚ましや興奮作用で勉強や仕事のやる気を引き出そうと多量に摂取される方が多いのですが、摂り過ぎると自律神経のバランスを崩して心拍数の増加や血圧の上昇が日常的になると言われています。特に女性は気を付けて下さい。だから、日常の飲み物としては三年番茶をお勧め致します。

当店には4種類の三年番茶が置いてあり、近くの同業者よりも種類が多いので、かなり遠くから来店される方もいらっしゃいます。おすすめ品は有機三年番茶と薪火番茶の秋摘みです。どちらも急須にお茶を入れて、お湯を注いで1分位で飲めるのですが、前者の有機三年番茶は薄い黄色の澄んだお茶になり、後者の薪火番茶は濃い茶色のお茶になります。

三年番茶は日常のお茶として使う他に、梅醤番茶として身体の塩分補給や体質改善に使われる方もいらっしゃいます。前の日に食べ過ぎて食欲がないという朝には、三年番茶を淹れ、そこに梅干しを入れてほぐし、カップ一杯も飲むと、トイレに行きたくなり、出すとお腹がスッキリというデトックスも期待できます。当店で扱っています三年番茶は有機JASマークの表示されていないものもございますが、日本における食養の本流・オーサワジャパンさん、ムソーさんが扱っています商品で、全て無農薬・無化学肥料のお茶です。安心してお使い下さい。

梅醤番茶……三年番茶を淹れ、その中に梅干しを1個入れてほぐし、お醤油を少量入れた飲み物。冷え性や血行不良に良いと言われ、食養生品としてよく使われます。

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